研究内容

2024/04/02

概要

高機能エネルギー材料の創出と製造プロセス開発を、電気化学プロセス、溶液プロセス、高温プロセス、真空プロセスを駆使して行っています。

非水系電解浴を用いる金属電析

高い耐食性や熱伝導性をもつ金属薄膜の作製手法の中で、低コスト・省エネルギー化の観点から、電析(電気めっき)法に着目しています。 電析法は、簡便な設備を用いて、室温付近での高速成膜が可能です。イオン液体をはじめとする非水系電解浴に着目し、水溶液では電析不可能だった金属の電析を目指しています。

当研究室では、高耐食性をもつアルミニウム、高融点・高強度をもつクロムやタングステンなどの電析に取り組んでいます。 良質な膜が得られる新しいイオン液体の合成や、大気中の水分が電析にどう影響するかといった基礎研究から、複雑な形状をもつ物体への電析などの応用研究に至るまで幅広く取り組んでいます。

マクロポーラス材料

リチウムイオン二次電池 (LIB) はパソコンや携帯電話のバッテリーに使用されるほか、電気自動車用のバッテリーにも用いられています。 現在、LIB の正極集電体にはアルミニウム箔が用いられていますが、このアルミニウム箔を多孔質構造にすることで、 高速充放電や高容量化が可能となり、電気自動車の充電時間の短縮と走行距離の向上が期待されます。

当研究室では、テンプレート法や選択エッチング法などの様々なプロセスを用いて、空隙径および空隙率が高度に制御された多孔質アルミニウムを作製する技術の開発に取り組んでいます。


ペロブスカイト太陽電池

再生可能エネルギーとして太陽光発電が脚光を浴びる中、ペロブスカイト太陽電池が注目を集めています。 ペロブスカイト材料は、Si の 100 分の 1 程度の厚さで光を吸収できることから、太陽電池の軽量化が望めます。 さらにペロブスカイト太陽電池は 25% を超える高い変換効率が得られるため、次世代の太陽電池としてその実用化が期待されています。

当研究室では、大面積成膜が可能なミストデポジション法による高品質ペロブスカイト膜の作製手法を確立しました。 実用化に向けて、ペロブスカイト太陽電池の構造全体をミストデポジション法によって連続成膜できる、生産性の高いプロセスの開発にも取り組んでいます。 最近ではペロブスカイト材料の耐久性向上や鉛フリー化の研究も行っています。


ミスト CVD 法による酸化物単結晶薄膜の作製

パソコンや携帯電話にも必須の半導体材料の多くは、これまで真空プロセスで作製されてきました。真空プロセスには、エネルギー消費が多い、高コスト、大面積化が難しいなどの課題があります。 そこで、大気圧下で(つまり、低環境負荷かつ低コストで)高品質な成膜ができるミスト CVD 法という独自の手法を用いた成膜の研究をしています。

現在は、酸化物の単結晶薄膜に注目し、酸化バナジウムを用いた環境の温度に合わせて自律的に熱の出入りを制御するスマートウィンドウや酸化ニッケル・酸化ガリウムを用いた高耐圧トランジスタの実現に向けた研究に取り組んでいます。