タングステン薄膜や微細部品 (MEMS) の製造技術への応用に向けて、100 ℃ 以下の温度での金属タングステンの電析の実現が期待されている。本研究では、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)および EMIC-AlCl3 イオン液体中の WCl4 および WCl5 の 80℃~120℃ における電気化学的還元挙動を調べた。ルイス酸性の EMIC-AlCl3-WCl5 浴では約 1 μm の厚さの W 含有率の高い膜が得られたが、その他の浴では析出物は得られなかった。EMIC-AlCl3-WCl5浴から 80 ℃ で得られた膜は、120℃ で得られた膜よりも W 含有率が高く、54 at.%であった。高 W 含有膜の X 線吸収端近傍構造スペクトルから、W は酸化状態で存在することが示された。本研究で得られた知見は、中温域での金属 W の電析に必要な電解液と電析条件を探索するための指針となる。
Shota Higashino, Yoshikazu Takeuchi, Masao Miyake, Takuma Sakai, Takumi Ikenoue, Masakazu Tane and Tetsuji Hirato