VO2 薄膜は、68℃で金属絶縁体転移(MIT)を起こすことから、スイッチング・デバイスへの応用が期待されている。V2O3 エピタキシャル膜をトポタクティック酸化させることにより、高配向の VO2 膜を得ることができる。しかし、この方法で得られた VO2 膜の MIT 特性に及ぼす酸化条件の影響については、十分に検討されていない。本研究では、酸素分圧、温度、時間などの酸化条件が、V2O3からVO2 膜へのトポタクティック変態に及ぼす影響を調べ、高品質の VO2 膜が得られる条件を明らかにした。熱力学計算により、VO2 が熱力学的に安定となる酸化雰囲気を、水蒸気と水素を含む混合ガスによってつくることができることを示した。様々な条件下での実験を行った結果、最適な酸化条件は、酸素分圧10-20~10-8 atm、温度500℃、時間6時間以上であることが明らかになった。この条件下で、V2O3 はトポタクティックに VO2 に酸化され、得られる VO2 膜の電気抵抗は MIT 前後で 4.7 桁変化した。
Hisato Nishii, Takumi Ikenoue, Masao Miyake, Tetsuji Hirato