負極に金属 Al を用いる Al 二次電池は、ポスト・リチウムイオン電池の有力な候補の一つである。しかし、Al 電池の一般的な電解液である 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(EMICl)ベースのクロロアルミネートイオン液体は、非常に高価である。本研究では、第一級および第二級アルキルアミン塩酸塩、すなわちエチルアミン塩酸塩(EtNH3Cl)およびジメチルアミン塩酸塩(Me2NH2Cl)をベースとした、低コストの新規クロロアルミネートイオン液体について報告する。これらのアルキルアミン塩酸塩の利点は、近年研究が進められている第三級アミン(Me3NHCl や Et3NHCl)よりもさらに低コストで、無臭であり、低分子量であることにある。EtNH3Cl-AlCl3 と Me2NH2Cl-AlCl3 の二元系混合物は、どちらも室温では液体にはならないが、これらの 2 つの系を混合し、三元系にすると、室温でイオン液体になる。この電解液中において、電池の充電に必要な、Al 電析と AlCl4– イオンのグラファイトへのインターカレーションが起こることを実証した。また、アルキルアンモニウム・カチオンは、-0.3 V vs. Al 以下の電位でのみ分解する。この低コストの電解液を用いた Al-グラファイト電池の性能は、従来の高価な EMICl ベースの電解液を用いた電池の性能に匹敵する。この低コストの EtNH3Cl-Me2NH2Cl-AlCl3 電解液を用いることで、Al 電池の実用化が促進されることが期待できる。
Takashi Kubo, Tatsuo Yamamoto, Takumi Ikenoue, Masao Miyake, Tetsuji Hirato