V2O3のエピタキシャル成長膜は、温度 155 K で金属-絶縁体転移を起こし、抵抗率が劇的に変化する。そのため、電流駆動型のスイッチングデバイスや、超伝導コイル保護用のスマートスイッチングデバイスへの応用が期待されている。しかし、従来のV2O3 エピタキシャル膜の作製法では、高真空を必要とするため、製造コストが高く、生産性が低い問題がある。本研究では、高真空を必要としないミスト化学気相成長法(ミスト CVD 法)を用いて、R、C、および A 面のサファイア基板上に V2O3 エピタキシャル成長膜の作製を試みた。その結果、いずれの基板上でも 823 K で得られた膜は 155 K 付近で明確な金属-絶縁体転移を示し、抵抗率が劇的に変化することが示された。C 面サファイア上の膜は、R 面およびA 面サファイア上の膜よりも低い転移温度(129 K)を示した。低コストプロセスであるミスト CVD 法によって高品質膜が作製でき、V2O3ベースのデバイスの量産の可能性が示された。
Hisato Nishii, Shintarou Iida, Akira Yamasaki, Takumi Ikenoue, Masao Miyake, Toshiya Doi, Tetsuji Hirato
Journal of Crystal Growth, Volume 626, 15 January 2024, 127484